保健師の国家試験過去問にチャレンジ!

  • こちらでは2011年に実施された第97回保健師国家試験の問題と、その解答&解説を掲載しています。転職を考えている方の基本知識確認になるのはもちろん、看護師から保健師へとキャリアアップするために国家試験の受験を目指している方にもオススメ!
    問題傾向を掴み、正解を導き出すための基本的な考え方を知ることができます。上位資格である保健師に合格すれば、保健所勤務という選択肢が入ってきますから、転職の幅はいっそう広がること間違いなし!上位資格の試験ということで決して難易度は低くありませんが、将来的に保健師資格への挑戦を考えているなら、早めに1度は解いておくことをオススメします。

保健師国家試験過去問

それぞれの問いに対して適切なものを選びなさい。

問1.
次のうち、労働基準監督署の設置者として適切なのはどれですか?
a. 市町村
b. 都道府県
c. 国
d. 独立行政法人
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答:c
【解説】
各都道府県の管内に置かれているため、ついついbを選んでしまいがちですが、設置しているのは厚生労働省です。なので、正解は国になります。労働基準法に則って労災認定を行ったり、労働基準法違反の告訴状を受け付けたりといった業務を主に実施。

問2.
次の中で、がんの種類と危険因子の組み合わせとして適当なのはどれですか?
a. 甲状腺がん・紫外線
b. 大腸がん・ヘリコバクターピロリ
c. 肺がん・飲酒
d. 喉頭がん・喫煙
回答をチェック
答:d
【解説】
まず、aの甲状腺がんですが、確実視されている原因は放射線。これはチェルノブイリ原子力発電所事故のあとに甲状腺がん患者が急増したことから判明したものです。ほかにも常染色体優性遺伝による家族性発症があることも分かっていますが、それ以外の原因はそれほど明確ではありません。よって、紫外線となっているのは誤り。次にbですが、ピロリ菌は胃がんの原因。さらにcの肺がんですが、原因は喫煙、アスベスト、ラドン、クロムなどが挙げられており、特に飲酒との因果関係は認められていません。 以上から、答はdの喉頭がん。最大のリスクファクターが喫煙で、さらに多量のアルコール摂取もリスクを増大させるといわれています。

問3.
次のうち、我が国で50年前と比べて増加しているのはどれですか?
a. 大腸がん年齢調整死亡率
b. 脳血管疾患死亡率
c. 結核死亡率
d. 心疾患年齢調整死亡率
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答:a
【解説】
これは比較的簡単な問題。食事の欧米化により、胃がんの死亡率が減った代わりに大腸がんの死亡率が悪化しているのは非常に有名です。bとdはいずれも血管の健康と深く関わっており、カテーテルなど医療の進歩、塩分の摂取過多を控える風潮が出てきたことで死亡率は減少しています。また、cの結核については抗生物質の登場で大幅に死亡率が低減しているので、これを選ぶ方はあまりいないでしょう。

問4.
ある禁煙教室を終えた男性は、終了から2ヶ月間にわたって禁煙に成功。しかし、1度うっかり喫煙してしまい、そこから時折たばこを吸うようになってしまいました。そして保健師に「このままでは再び喫煙習慣が身についてしまう。どうしたらよいか」といった旨の相談をしてきています。対象者が自分の保健行動を再評価することが重要と考えた保健師のアドバイスとして適切なのは、次のうちどれですか?
a. もう1度、わたしが保健計画を作成しましょう
b. 禁煙できていた2ヶ月の経過を一緒に振り返りましょう
c. 喫煙の害についてもう1回復習してみましょう
d. ガムを噛むなどして喫煙習慣を遠ざけましょう
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答:b
【解説】
これは半ば国語の問題のようなものです。目的は“自分自身で保健行動を再評価してもらうこと”なのですから、aは当然不適切。対象者が自分自身で保健行動を見直すことにはつながりません。cについては、1度禁煙している以上、喫煙の害については分かっていると考えるべきで、現時点での助言としてはあまり効果的とはいえないはず。さらにdに関しては気を紛らわせているだけで、保健行動の再評価とは無関係。 以上から正解はbとなります。禁煙できていた時期の保健行動を対象者が主体となって見直せる上、成功体験を追体験させることで再び禁煙に向かう意欲を増大させる効果も期待できるでしょう。

問5.
次の中から、感染症に関する法律として2013年現在も現行法となっているものを2つ選んでください。
a. 伝染病予防法
b. 結核予防法
c. 後天性免疫不全症候群の予防に関する法律
d. 感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律
e. 予防接種法
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答:d,e
【解説】
5つのうち、伝染病予防法、後天性免疫不全症候群の予防に関する法律は1999年、結核予防法は2007年に廃止され、dの感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律に統合されています。ちなみに感染症の予防および〜の法律については一般に感染症予防法、感染症新法、感染症法などと短縮して呼称するのが普通。 予防接種法についてはジフテリア、百日咳、破傷風の3種混合、日本脳炎などが対象。結核予防に用いられるBCG接種についても、結核予防法が感染症法に統合された2007年、予防接種法の対象となりました。 以上から、答は感染症法と予防接種法の2つです。

問6.
高校生が性行為によるHIV感染を不安に思って相談および検査を希望して来た場合、保健師の対応として正しいのはどれですか?
a. HIV検査について両親の同意を確認
b. 高校生の社会的立場、モラルに関して説明
c. 感染リスクのある行為を説明
d. エイズが死に至る病であることを説明
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答:c
【解説】
これは保健師という立場について理解していれば、容易に解ける問題です。まず、aについては論外。HIV検査は個人情報を守秘した上で行うもので、未成年であっても家族であっても方針に変わりはありません。次にbですが、これは学校の先生や保護者が行うべき領域であり、医療従事者や保健師の仕事とは無関係。さらにdについては、もはや意味不明というしかありません。病気の心配をしてきている対象者にわざわざ恐怖を与えて何の意味があるのでしょうか。さらに、不安を感じて検査を希望しているのであれば、対象者はエイズの危険性について一定上は理解しているものと考えるべきです。 以上から、正解はcになります。予防を考える上で有益な情報を提供すること。それこそが保健師としてもっとも重要な職務であるはずです。

問7.
ある民間の指導機関に委託して、禁煙を目的とした禁煙教育を行いました。次の表を見て、もっとも費用対効果が高い方法はどれか選んでください。

方法

参加人数

禁煙成功人数

費用

個別指導

40名

25名

250万円

グループワーク

50名

25名

100万円

通信指導

100名

20名

50万円

講義

150名

2名

10万円

a. 個別指導
b. グループワーク
c. 通信指導
d. 講義
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答:c
【解説】
知識はまったく関係なく、純粋に資料読解能力を問う問題です。単純に費用対効果を考えるなら、参加人数に意味はなく、1人を禁煙させるのにいくらかかったかを計算すればOK。費用÷禁煙成功人数の数字が“1人を禁煙させるのに必要だった金額”なので、それぞれの数字を出してみましょう。aの個別指導は250÷25=10万円、bのグループワークが100÷25=4万円、cの通信が50÷20=2.5万円、最後にdの講義が10÷2=5万円。 以上から、もっとも費用対効果が優秀なのはcの通信指導となります。

保健師は転職有利!?保健師に挑戦してキャリアアップ♪

  • 解いてみた感想はいかがですか?もともと保健師というのは看護師の上位に相当する資格ですから、看護師国家試験と比べて難しい問題が多くなっています。また、医療関係の問題だけでなく、健康増進を目的とした法令に関する設問が含まれるのも特徴。
    保健師として保健所に勤めた場合、地域の保健指導や保健サービスに従事することになります。看護師のように目の前の患者だけを相手にしていれば良い…というものではありませんから、敷居が上がるのは当然ですね。ただ、保健所は地域保険法にもとづいて、各エリアに設置されるものなので、保健師の資格を持っているとそれだけで転職は大幅に有利になります。さらに病院と違って公共機関としての性格が強いため、体力的にはやや楽になる可能性が高いでしょう。
    これから転職を考えているのなら、子育てや家事との両立もしやすい保健師資格取得を考えてみては?